AGA(男性型脱毛症)とは
成人男性にみられる進行形の脱毛症のことで、AGA(AndoroGeneticAlopecia)は直訳すると「男性ホルモン型脱毛症」となります。思春期以降に、額の生え際、もしくは頭頂部の髪が薄くなったり、または両方から薄くなります。一般的に遺伝または男性ホルモンの影響によって抜け毛が進行し、薄毛が目立つようになります。男性ホルモンであるテストステロンは血液を介して全身を巡っています。その一部が毛乳頭細胞に取り込まれ、5α-還元酵素の作用でDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。DHTは毛母細胞のアポトーシス(細胞の自然死)を促す効果があり、その結果ヘアサイクルの成長期が短くなり、太く硬い髪に成長する前に抜けてしまうので、見た目には細く柔らかい髪がどんどん増えていき、結果的に薄毛が進行していきます。日本皮膚科学会が発表している、2017年版の薄毛治療のガイドラインではフィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ)、ミノキシジルの3剤が推奨度A(最も薄毛治療に有効)を得ています。
AGA診療ガイドライン
日本皮膚科学会が2017年に発表した男性型脱毛症診療ガイドラインは治療方法にA~Dまでランク付けされています。推奨度Aについては強く勧められるとされており、効果の高い治療です。
推奨度A:行うよう強く勧められる
「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル外用」
推奨度B:行なうように勧められる
「自毛植毛」
推奨度C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠が無い
「塩化カルプロニウム外用」「医薬部外品・化粧品等の育毛剤の外用」
以下省略。
フィナステリドの効果
フィナステリドは頭皮のヘアサイクルを整える効果があり、抜毛を予防する効果があります。頭皮のヘアサイクルを乱す男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)を生成する酵素(5α-還元酵素)の働きを阻害し、DHTが生成されるのを抑制し抜け毛を抑える働きがあります。AGA治療薬として2005年に、国内では厚生労働省に承認され、MSD株式会社から商品名「プロペシア」として取り扱われております。2015年に特許が満了になり、現在は他社メーカーによるプロペシアと同じ効果効能のジェネリック医薬品が製造され取り扱われております。フィナステリドの服用は成人男性に限られており、女性と未成年は服用できません。
また現在ではフィナステリドよりも強力にDHTの産生を抑制するデュタステリドという成分が開発され、「ザガーロ」の商品名でAGA治療薬として登場したことから、乗り換える方が多くいらっしゃいます。
日本皮膚科学会がガイドラインを発表した時期(2010年)にはデュタステリドを成分としたAGA治療薬がなかったことからランク付けにはありませんが、近い将来このデュタステリドも推奨度Aに加わる事が予測できます。
ミノキシジルの効果
ミノキシジルは血管拡張と血流改善効果があり、毛乳頭・毛母細胞に栄養が運ばれ活性化される事により発毛が促されるとされています。元々は高血圧の治療用に開発されていた血管拡張剤です。リアップやロゲインなどミノキシジルを有効成分としたAGA治療薬があり、男性女性共に服用が可能です。外用タイプの他に内服タイプのミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)があり、外用と比較して内服タイプの方が高い効果がある事が知られています。
「フィナステリド」「ミノキシジル」の二つの治療薬は頭皮に与える影響が各々異なるため、併用して服用する事が可能です。フィナステリドは脱毛を抑え、ミノキシジルは発毛・発育を促し単剤で服用するよりも高い効果が期待できます。
AGA治療薬における初期脱毛
必ずしも全員に言える事ではありませんが、AGA治療薬を使用し始めると一時的に毛髪が抜ける量が多くなります。これは初期脱毛といって、乱れたヘアサイクル(毛周期)が整うにつれて、成長が止まった毛髪を新しく生えてきた健康な毛髪が押し出すことで起きる症状と考えられています。ここで使用を辞めてしまいますとヘアサイクルが元に戻ってしまい、効果が無くなってしまいますので根気よく継続する事をお勧めします。なお初期脱毛の期間や程度は個人差があります。