シアリスをインターネットで検索すると、個人輸入代行業者のサイトに混じって、アドシルカ・ザルティアという薬剤が検索に引っかかります。シアリス・アドシルカ・ザルティアは、共に日本新薬から販売されている有効成分が「タダラフィル」の薬剤です。同じ成分が入っているのに何故違う名前で販売されているのでしょうか？
シアリスとは
シアリス(Cialis)は米国のイーライリリー・アンド・カンパニーが製造したED（勃起不全）治療薬で、2007年に厚生労働省の認可を受けて国内で販売が開始され、2009年に日本新薬に販売が委託されたバイアグラ・レビトラに続く3番目のED治療薬です。有効成分はタダラフィル。シアリスは他の2つのED治療薬と比べて、薬の効果時間が長く、食事の影響をうけづらいED治療薬です。ただし、全く即効性がなく効くまでの時間も時間がかかってしまいます。性行為を行う予定がある日に予め服用しなければなりません。
また食事に関してのですが、すべてのED薬は食事の直後に飲んでも効果がでにくく、これはシアリスでも同様です。どのED治療薬も食後に服用すると効果が減弱するので、ED治療薬はすべて空腹時に服用するよう心がけましょう。どうしても食事を摂取する際は予めED薬を服用し、体内に吸収させてから、軽く飲食することが望ましいです。アルコールは摂取しても大丈夫です。
アドシルカとは
アドシルカ(Adcirca)は有効成分がシアリスと同じ「タダラフィル」の薬剤で、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」の治療薬として承認されています。肺動脈性肺高血圧症とは、心臓から肺に向かう血管(肺動脈)の血圧が高くなってしまう病気です。様々な理由から、肺の細い血管が異常に狭く・硬くなり、血液の流れが悪くなります。すると、心臓から肺に届けられる血液の循環が滞ります。血液の流れが悪いとしても、心臓は毎回一定量の血液を送り出そうとするので、肺へ血液を送り出す右心室は必要以上の力で働いてしまいます。右心室は、本来そこまでの強い力に耐えられないので、負担がかかり続けると右心室の機能が低下してしまい、結果心不全を引き起こしてしまうのです。
アドシルカの有効成分タダラフィルはPDE-5阻害薬に分類され、血管拡張作用のあるcGMPを分解してしまうPDE-5(ホスホジエステラーゼ5)の働きを阻害し、結果肺の血管の拡張が促されます。アドシルカは、国内で広く使用されている「ベラプロスト」や「ボセンタン」等の肺高血圧症治療薬とは作用機序が異なるため、国内の肺動脈性肺高血圧症患者に対し併用治療が行える可能性が期待されていました。
シアリスとアドシルカの違い
上述の通り、シアリスもアドシルカも同じイーライリリー社が製造した、有効成分がタダラフィルのPDE‐5阻害薬です。シアリスはED治療薬として、アドシルカは肺動脈性肺高血圧症の治療薬として用いられ、血管の拡張を促し、血流を改善します。
シアリスには5mg錠・10mg錠・20mg錠の規格があり1日20mgまで服用できます。一方、アドシルカは20mg錠の規格のみで、1日の服用量が40mgとなっています。対象の疾患の違いから極量が異なっているだけで、EDの方がアドシルカを服用したり、シアリスを40mg服用することは出来ません。
そもそもアドシルカは、肺動脈性肺高血圧症と診断されなければ処方を受けられませんし、肺動脈性肺高血圧症の薬はアドシルカだけではないので、仮に医師から診断を受けてもアドシルカを処方されるとは限りません。
また、アドシルカが40mgまで服用できるならシアリスも同量を服用することは可能なのか？と疑問を持たれる方がいらっしゃいます。結論から言えばアドシルカの臨床試験から、タダラフィル40mgを服用しても大きな副作用はない事が認められています。しかし、ED治療薬としてのタダラフィルの服用は1日20mgまでとなっていますのでご注意下さい。
タダラフィルの副作用や禁忌・併用禁忌
比較的副作用が少ないとされるタダラフィル(シアリス・アドシルカ)ですが、頭痛や顔の紅潮などの症状が出る場合があります。頭痛はロキソニンなどの鎮痛剤を併用しても問題ありません。副作用が治まらなかったり、ひどい症状が出る場合は速やかにかかりつけの病院などで医師の診察を受けてください。
また、ニトログリセリンを始めとする硝酸剤を服用中の方・3ヵ月以内の心筋梗塞・6ヵ月以内の脳梗塞や脳出血の既往歴がある方・網膜色素変性症・重度の肝障害のある方・不安定狭心症の方はタダラフィルを処方することが出来ません。特に硝酸剤を服用中の方はタダラフィルの服用により血圧が急激に低下し、重篤な症状になる恐れがある為、絶対に併用しないでください。
