「男性ホルモンが多いとハゲる」「ハゲは遺伝でどうすることも出来ない」などいろんな話を聞きます。職場や学校でも話題にあがったことがあるのではないでしょうか。しかし、どの話が真実なのか知らない方も多いと思います。そこでAGAの仕組みについて説明して行きましょう。
AGAの仕組み
AGAとはAndrogenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」のことです。
髪の毛は通常「生える、成長する、抜ける」というサイクルになっていますが、AGAの方はこの「成長する」時期が短くなります。髪の毛が成長しないで抜けると細い髪や短い髪が多くなります。
原因としては5αリダクターゼやアンドロゲン受容体などの遺伝、睡眠不足やストレス、喫煙などの生活習慣、高カロリーな食事、栄養失調などの食生活、頭をよく洗えてなかったり、洗いすぎてたりする頭皮環境が原因として考えられます。
5αリダクターゼやアンドロゲン受容体と聞いて「?」と思う方は多いと思います。5αリダクターゼは男性ホルモンのテストステロン(TH)を別の男性ホルモン(DHT)に変換する酵素で、両親どちらからも遺伝の可能性があります。アンドロゲン受容体とは頭皮の男性ホルモン受容体のことで母親からのみ遺伝します。
THと5αリダクターゼが結びつくことにより、DHTが形成されます。このDHTは一次性徴、二次性徴には重要な役割を担っています。
DHTは一次性徴では胎児が男性としての生殖器を形成することに関して大きな役割を担っており、二次性徴では思春期に声変わりをしたり、髭が生えたり、精子が作られるのに必要となっています。
しかし、DHTはアンドロゲン受容体と結びつくことによって髪の毛の成長を制御してしまします。
「生活習慣や食生活は改善出来ても、遺伝は改善することが出来ない」と思うかも知れません。しかし、AGAには治療薬があります。次はそのAGA治療薬のプロペシアについて説明します。
DHT産生を抑制する基本の薬プロペシア、ザガーロ
プロペシアはフィナステリドを有効成分としたAGA治療薬で、アメリカのメルク社が開発し、日本では2005年12月にMSD株式会社から販売されました。プロペシアを服用すると、5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を制御します。DHTの生成を制御することにより、髪の毛の成長期が長くなります。成長期が長くなると髪の毛にコシが出たり、休止期の毛穴から毛髪も成長しAGA治療の効果が期待出来ます。
プロペシアの服用する時間帯は決まっていませんが、飲み忘れを防ぐために朝食後や就寝前など、ご自身のライフスタイルに合わせて服用することをお勧めします。2015年にプロペシアの特許権が満了し、プロペシアジェネリックの処方開始されました。
また2016年にはザガーロの処方も開始されました。ザガーロも5α還元酵素阻害薬ですが、DHTの抑制率がプロペシアが60%弱に対し、ザガーロは90%強もあります。そのためプロペシアより1.6倍の発毛効果が認められています。2020年、ザガーロの特許権が満了を迎えたため、全てのAGA治療薬のジェネリック医薬品が販売(処方)されるようになりました。仙台ユナイテッドクリニックでは、全てのAGA治療薬のジェネリック医薬品を処方しています。
お薬が効いてる証拠?
実はプロペシア、ザガーロを服用してしばらくすると「初期脱毛」が起こり場合があります。これは発毛のサイクルがお薬の効果で正常に戻るため、一時的に髪の毛の退行期が重なることによって起こります。初期脱毛はお薬の効果が出ている証拠ですので安心してください。
男性しか使えない?
プロペシア、ザガーロの副作用として性欲減退や勃起不全などが報告されていますが、プロペシアの副作用の発現率は4%となっており、一般のお薬と比べても低くなっています。
但し女性には処方出来ません。理由として男子胎児の生殖器官が正常に発達しない危険性があるためです。また、プロペシアは皮膚からも吸収されることが分かっているため、コーティングされてなかったり、割ったり破損して成分が直接皮膚に触れると体内に吸収されてしまうので、女性は決して触れないようにしてください。
実感するのはいつ?
そして気になるのが「発毛の実感が出来るのはいつ頃からか」ということです。連日投与ですと早い方で服用開始3カ月程度で抜け毛が減少し、生え際のうぶ毛が増加するなどの効果が現れますが、通常は6カ月の連日投与で効果が確認出来ることが多く、1年~3年程度続けることで多くの方が抜け毛の進行が止まったと実感出来るようになります。
飲み薬ですので塗り薬みたいに匂いもなく、長期的に続けることで効果が実感できるので周囲にもAGA治療していることが分かりにくくなります。
推奨度Aランク
プロペシアの有効成分であるフィナステリドやザガーロの有効成分であるデュタステリドは日本皮膚学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも上記で記載した理由などで女性型脱毛症では推奨度Dランクですが、男性型脱毛症では推奨度Aランクとなっています。